父の遺言

そろそろ遺言を書こうかなと、ある日父が言い出した。
まだ早いのに、そういいたいところだが、人はいつどうなるか判らない。
父の友人が先日突然亡くなったことも関係しているのかもしれない。
正式な遺言を作っておこうと父と話した。
といっても大した財産があるわけでもない。
それでも父としては誰になにを私タイなど希望があるらしい。
私は作成する日に黙って付き添うことにする。
父の真摯な顔を見ていると、年を取ったなと思わざるを得ない。
私たち家族ももしものことを考えておいた方がいいのだろうか。
そんなことを考えたら複雑な気持ちになった。
「骨肉争いだけは起こらないから大丈夫よ」
と冗談を言っていてみたが、父は口元だけで笑顔を作っただけだった。
いろいろ考えてるんだなと、本気なんだなと思うと、こっちの方が切なくなって、涙が出そうになった。
父が好きなように作ればいい。
思い残しのないようにすればいい。
私たちはそれが最期の父からの手紙だと思って、もしもの時は遺言を受け取ろうと思う。

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